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第八十一話 “ 新たな気持ちで ” 07-21

 雨ニモマケズ  風ニモマケズ  夏ノ暑サニモ峠道ニマケナイ丈夫ナカラダヲモチ
人トデアイ  優シサニフレ  強サノイミヲシリ
南ニムカウ旅人アレバコレマデの道ノリヲ思イケントウヲイノリ
北ニムカウ旅人アレバトモニ旅ヲシハゲマシアウ

自然ノナカニ身ヲオキ  自然ノ力強サヲシリ自分ノ小イササヲ知ル
ソレハジブンヲ卑下スルノデハナク  謙虚サヲオボエ感謝ノキモチヲモツ
デアイカラオオクヲ学ビ  ソレヲ伝エル

人カラウケタ恩ヲツギノ人ヘウケワタス  マダ見ヌデアイと波ヲ夢ミテ
人ニワラワレテモ自分ヲ信ジツラヌキトオス  
イツモ笑顔ヲタヤサズ  自然体デ自分ニ素直ナ心ヲモチ  イツデモ自分ヲ信ジラレル

ソウイウ人ニワタシハナリタイ

今日まで。  色々考えた末。  今は青森を北上せず。  先に八戸港から苫小牧港へ。
フェリーで北海道へ向かう事にしました。

短い夏の北海道を少しでも長く旅する為です。

北海道の旅が終わったら。  函館から大間(青森)へ戻るつもりでいます。
本州から北海道に行くのはこの旅の一つの大きな区切りと感じています。
だから今日は感慨深いものがあります。

北海道を旅する事はこの旅を決めた時からの楽しみでした。
大自然の中に身を置き、自分がどれほどのものなのか。
困難な状況の中から自分の弱さを知りたいと思います。

またその逆も。
まだ見ぬ新しい自分を見つけられたらとも思います。
北海道をどのように走るかはまだ決めていません。

一つだけ決めているのは。  最北端、稚内の宗谷岬へ行き利尻島へ渡る事。
ただそれだけです。
すべてはその時の自分の気持ち次第。  素直に従い旅をしようと思います。

自分の中で区切りの今日。  改めてお礼を伝えたいと。  ここまでお会いしたたくさん皆さん。
ブログを通じて一緒に旅をしてくれている皆さん。
ここまで本当にありがとうございました。

皆さんに出会えた事。  繋がれた事に。  心から感謝します。
明日からまた新たな気持ちで。  旅をしていきたいと。  そう思います。

では。



~八戸発苫小牧行きフェリーより夕日を見ながら~

 

第八十二話 “ Great Surf Jorney ” 07-22

深夜1時30分  北海道。  苫小牧港に到着。

ありきたりで申し訳ないが。  第一印象は。  『寒い…』だった。
霧雨が降る夜中に念願の北海道へ到着した訳だ。
ちなみに。  歩き旅のKENGO君も一緒だ。

このフェリーに乗るのには一騒動あった。

当初は22時発翌7時着のフェリーに乗る予定だった。
この時間でフェリーに乗れば一回野宿しなくて済む。
まだお盆休みでも無いし、予約はいらないだろうと思っていた。
が…。
お昼過ぎにフェリー乗り場に着き、係りの方に聞いて見るとすでに一杯。
17時30分発のフェリーなら空きがあるらしい。  慌ててKENGO君に連絡する。
彼は八戸でゆっくりしてからフェリー乗り場に向かうと言っていたからだ。

電話には出たものの。  開口一番。  『充電が!電池がないです!!』と。
『えっえっ?あぁ!22時一杯だって!17時30分なら空いてるって!17時まで受付してるって!!』
要点だけ伝えると返答を待たずに電話は切れてしまった。
ちゃんと伝わったかな?  間に合うかな?  と、心配になる。

待つ。  待つ。  待つ。

すでにトラックの搬入が始まっている。
そろそろ自分もフェリーに搭乗と言う時に彼はやって来た。  間に合った。
やっぱり一人より二人の方が楽しいし。  なんだか色んな意味でホッとした。

よくよく考えると。  結局。  自分の方が一人旅が寂しかったのかも知れない。
何だかんだ言いながら。  彼のペースに自分が合わせていた。
先に進む事も出来たのに。  長い長い岩手の険しい道のりを共にしてきた彼と。
中途半端な別れは嫌だった。  
だから彼がフェリーに間に合った時は嬉しかった。

そして。  フェリーの中でこんな約束をした。
北海道はそれぞれが反対回りになり。 
どんなルートになるかはお互いにはっきりとはしていないが。
再会出来るチャンスは一度はあるはず。
もし再会出来たその日は一緒に乾杯しよう!
と。
そんな約束をした。

苫小牧に到着後。  フェリーターミナルで夜を明かす。

夜が明け始める。  あいにくの雨模様でのスタート。
『じゃ行くよ!』と。  一足先に北海道の大地にベダルを漕ぎはじめた。
あいにくの雨もこんな時は調度いい。

さて。  もうひとつの出来事が同時進行で起きていた。
八戸でお世話になったCHIBAさんだ。

フェリーでの仮眠から目を覚ましふと携帯を見ると。
一通のメールが。  『22時の便キャンセル待ちしてます!』
と。
どういう事かと言うと。  つまり。  一昨日。
お酒をご馳走になっている時にCHIBAさんが呟いた一言。

『俺も旅しよっかな~…。』の一言を。  本当に実行した訳だ。
これには驚いた。
そして夜便のキャンセルは出ず、今日の朝の便でCHIBAさんは北海道へ向かっている。

さっき電話が来た。  今苫小牧にいるそうだ。
そして。  まず東へ向かったKENGO君を追いかけ。
その後西へ、そして北上する自分をママチャリで追いかけてくるそうだ。

『二人に会ってもう一度パワーをもらいたい!』  と。  悩みを抱えて。  旅人に出会い。
そして何かを振り切るかのように。

ただ。  CHIBAさんは一つ勘違いをしている。
行動を起こしたのはCHIBAさん自身であり。  僕等がどうこうしたわけではないって事を。
もうすでに。  一歩踏み出したんだから。
動きだしたんだ。

さてさて。  北海道初日。
やはり北海道!って展開がこの大地には待っていた。

チャリダー♪



チャリダー×2♪



チャリダー♪



自分が今日会ったチャリダー4人♪

札幌へ向かいながら部品調達。  念には念のタイヤ二本。  ワイヤー類に。  シートポスト。
チェーンは新品に付け替えた。

自転車屋の店長さん。



すごく親切にして下さり本当にありがとうございました!
めちゃめちゃ痛い失費だか。  もしも北の外れで立ち往生となったらその方がキツイ。

今日あったチャリダーに聞いたところによると。  北海道を一周すると。  コースによるが。
3000㌔くらいあるらしい。

沖縄から北海道まで。  自分が走った距離は。
一度メーターが壊れたのでピッタリ正確ではないが、3800㌔くらいだ。

…そういうことらしい(笑)   笑えない…。

さて。  記念すべき北海道サーファーさん1人目は。



札幌のYさんだ。
そしてYさんの通っているReal Driveさんに案内して頂き。
T店長さんとJさんにもお会いすることが出来た。



寒い北海道にあって熱い人達。 そこからこの土地の雰囲気を感じ、まだ見ぬ波を思い浮かべた。
*Yさん!いろいろありがとうございました!お会い出来てよかったです!
*Real Driveさんステッカーありがとうございました!

さて。  北海道を一周すると。  自分のペースとチャリダーさん達に聞いた話しを考えると。
2ヶ月近くかかる計算だ。
後の事を考えればとても無理だ。

ただ。  後の事を考えればの話しだ。

自分には利尻島の先。  網走や知床。  根室や釧路にどんなポイントがあるのか。
それをこの目で確かめて見たい。
今。その衝動にかられている。
自分には函館&苫小牧周辺のわずかな知識しかない。
だから。
だからいいのだ。

ここまではある程度の情報を元にポイントに向かっていた。
が。
今回は。  この北海道は。  インターネットやローカルさんの情報に頼らず。
自分でサーフポイントを探し出してみようと思う。

DISCOVERY

以前にこんな事を言っている方がいた。
最近の旅行者はテレビや雑誌、インターネットで見た情報を確認しに来る旅だと。

『あっ!ここテレビで見た場所だ!』  『雑誌に載ってたから行ってみよう!』
下調べをし、そこで得た情報を確認するだけの旅。
その情報と自分が目にしたその場所のギャップで良し悪しが決まる。
だから期待ハズレなんて事もある。

先入観だ。  そこに新たな発見はない。  景色も波も。  その時、そこにあるものがすべてだ。
それをダイレクトに感じて見たい。

そんな旅を。  望んでいた。  冒険だ。

自分の中の。
Great Surf Jorneyが今日始まった。

第八十三話  Great Surf Jorney Day-2 
“ 探索開始 ” 07-23

今朝9時。
都会を離れ、まずは日本海を目指す。

正午前。  Ishikariへ到着。  サーフポイント探索を開始。  Ishikariにあるビーチを目指す。



そこには一級河川があるからだ。

海への脇道を見つけ小さな丘をあがる。



が。  残念ながら波は無い。



もしかしたら。  うねりさえあれば出来るのかも知れない。
遠くの海岸線を見渡すが波がある様子は無い。

先へ進む。  その先も。



河口やビーチを見つける度に足を止めチェックする。  しかしどこも同じだ。
でも。  岩手のUポイントのように。
他に波が無くてもどこかで人知れずブレイクしている波があるかも知れない。
そんな期待を胸に波を探し求める。

走る道々は。  札幌と言う都会から離れれば離れるほど。  優雅でダイナミックになって来る。



始まったなぁと。



この国道231号線の景色達が感じさせてくれる。

走りながら考えていた。  この日本海側で。  波を探すのはかなり難しそうだなと。
基本的なうねりがあれば波も見つけやすいが。
何か気象的変化が無い事には、ここなら出来るかもと言う予測しか出来ない。
後で天気図を確認しておこう。

雨が降り出した夕方に。  目的地にしていたATSUTAという場所へ到着した。
海岸近くのキャンプ場にテントを張った。



これ以上雨が強まらない事を願いたい。
土地の人がこう言った。
『ここからRUMOIまでが海岸線ルートで1番大変な場所だよ』と。

RUMOIとはここから北へ100㌔ほど離れた街だ。
二日、いや三日はみておこう。

しかし。  3日目にしていきなり難関に挑戦する事になるとは思ってもいなかった。
でも考えようによっては。  ここさえ越えればと言う見かたもある。
だが。  あまり意識しないようにしよう。
要所要所でまだまだ難関はたくさんあるだろうから。
いったいいつ北海道での最初の波乗りが出来るのだろうか。

その日が来るのを夢みて。
~DATE~
札幌~ATSUTA
走行距離55㌔/132㌔
チャリダー0/4
サーファー0/3

*舗装悪し・路肩狭し・ブレーキワイヤー明日交換

 

第八十四話  Great Surf jorney Day-3 
“ 雨の足止め。これもまた好し ” 07-24

雨音と意外な波の音で目を覚ます。

慌てて海を見てみると。
キャンプ場の目の前のビーチの河口付近ですねくらいの波が割れている。
しかし波乗りが出来るほどではない。
とは言え昨日は感じられなかった期待感がどこかにある。

今日サーフィンが出来るか出来ないかは別だが、やはり波は存在するのだと。

隣でキャンプしていた岩手から来たバイカーさんが。
『昨日はすごい雨だったね!大丈夫だった?』と。
ん?なんの事だろう?
夜中の3時頃。  すごい雨が降ったらしい。  全く気づかなかった。
少し旅に慣れすぎた。  ある程度の臆病さは必要だ。  気を引き締めなければ。

キャンプ場のオーナーさんが。
『今日は雨だからこの先に進むのはやめときな』と、昨日この先が難所だと教えてくれた方だ。
地元の方の意見は聞くべきだ。  無理をすれば必ず損をする。  今日はここに留まる事にした。

もう一寝入りし、体を休める。

電話が鳴った。  八戸のCHIBAさんだ。
『いろいろあってさ~。とりあえず今からそっちに行くよ!』と。
とりあえず声は元気そうなので安心するも何があったのだろうか。

しばらくすると。
車に乗ってCHIBAさんがやって来た。  北海道に住む妹さんの家族も一緒だ。
顔を見たら疲れてはいるが元気そうで安心した。
聞けば苫小牧に到着後レンタルサイクルを借りママチャリで走り出したものの。
パンクばかりでなかなか進めず、東奔西走したらしい。
『ちょっと俺の考えが甘かったよ(笑)』と。
でも。
確かにママチャリでの再会は出来なかったが。  まず行動を起こした事。  それが1番だ。

自分もたくさんの失敗から多くはないが学ぶべき事はある。
それが次に繋がり経験となる。
『トラブル続きで参ったよ~』と言いながらも、どこか吹っ切れたような。
そんな顔に自分には見えた。



*CHIBAさん。妹さんファミリーさん。  本当にありがとうございました!

さて。
今日は嬉しい事ばかりの日だ。
沖縄のシーナサーフでお会いした北海道在住のAさんと偶然のタイミングで大阪から北海道へ来ていたEさんがこのキャンプ場まで来てくれる事に。
北海道でサーフボードを積んでいる車は珍しいので到着はすぐにわかった。

沖縄でお会いしたお二人に北海道で再会。  面白く不思議なものだ。
お二人もレンタルサイクルを借り近くのお寿司屋さんに連れて行って頂いた。

二時間待ち。  ぶらぶら近くをサイクリング。
空腹もピークを迎えた頃。  再びお寿司屋さんへ。
かねとも寿司さん。
すごくリーズナブルなお値段で地元取れたての新鮮なネタで盛り沢山。



しかもおまけと言ってどんどん握ってくれる。  美味しい♪  お腹いっぱい♪
張り裂けそうなお腹を抱えお寿司屋さんを出ると。
さっきまでの天候が嘘のように晴れ渡る空。



嫌でもテンションが上がる。
夜はBBQをしてくださるらしい。  食材もたくさん買ってきたと。  少しお腹を空かせなければ…。

青い空にビーチと海。  波乗り好きが三人。  どうしたってサーフィンの話しになる。



昨日自分が走ってきた道の途中に、サーフポイントが一つあったらしい。
気になる。  気になる。  どうしても気になる。
一瞬迷ったが次の瞬間には『そこまで連れて行ってください!』と、頼みこんでいた。
後戻りはしない主義だが知ってしまった以上、好奇心が全てを上回る。
念のためにと、ボードを積み、そのポイントへ。

昨日走った道。  曇り空のしたで見る景色とは全く違う。  爽快な気分だ。
ポイントへ向かう入口は自分は気付いていない場所だった。





坂を下るとキラキラ光る海にうっすらとうねりが見えた。
もうどうにもならない。  おもちゃを目の前にした子供と一緒だ。
こうして意外な形で北海道&日本海での初サーフィンを楽しんだ。

気付けば日没間際まで波乗りをしていた。

慌ててキャンプ場へ戻る。  岩手のバイカーさんをBBQに誘っていたからだ。
お腹を空かせて待っていた岩手さん。(自分は沖縄さんと呼ばれていた(笑))
AさんEさんが用意してくれたラム肉やステーキを♪

キャンプ場のオーナーさんも混じりおお盛り上がり。  近くで花火も上がり。



北海道で夏を感じだ。  宴は続く。  夜になるとかなり冷える。  でも楽しい時間を。
短い夏を全力で楽しむように。  北海道の夜は過ぎて行った。

*AさんEさん!本当に本当にありがとうございました!そして
岩手さん。
そして厚田ビーチセンターのオーナーさん!

楽しい時間をありがとうございました!

 

第八十五話  Great Surf jorney Day-4 
“ 備忘録 ” 07-25

朝から晴れ。  やや風強し。
AさんEさんとお別れ。

午前10前出発。  国道231号線を北に向かう。
ATSUTA~MASUKEまでが難関ルートと聞いている。
果たして今日はどこまで行けるか。  自分でも検討が付かない。
夕方頃に地図を見て1番近いキャンプ場に向かう事にしよう。

走り出す。
やはり登り坂はそこそこある。  ただ思っていた以上では無く。
岩手を思えばなんて事は無い行程だった。
ただし。  坂道に関してのみの感想だ。
問題は3つあった。

一、路肩の舗装&幅
二、車のスピード&交通マナー
三、トンネルの多さ

今日の道のりに景色を楽しむ余裕は一切無かった。  むしろずっと気を張り詰めていた。
トンネルの入口が見える度に緊張から心拍数が上がるのがわかった。



もし、他のチャリダーに会ったらこの区間を十分注意するように伝えなければ。
今日走った区間の中にトンネルが20個。
自転車が走れる歩道は一つしかなく。  路肩の状態も悪く、もちろん狭い。
特に送毛トンネルは要注意。  狭い・暗い・長い・交通量多し

結局今日、ATSUTA~MASUKE間68㌔を走行。
ここまでくれば、この先当分トンネルはない。
途中のキャンプ場も考えたが、また明日トンネルを走るのは嫌だ。
まずはここまで来て一安心だ。

MASUKEのリバーサイドキャンプ場にテントを張り、ゆっくり寝る事とする。
暑くて汗は大量だったが、体力より精神的にとてもきつい行程だった。
おそらく後の記憶に残るだろう。

リバーサイドキャンプ場の管理人のおじさんが良くして下さった。
料金は取らず、無料でシャワーまで貸して下さった。  感謝感謝だ。  西日が暑い。

だが昨日の夜も急に冷え込んだ。  体調管理に気をつけるとしよう。

~DATE~
ATSUTA~MASUKE
走行距離68/200㌔
チャリダー0/4
サーファー2/7

*短い時間でしたが本当に楽しかったです♪
本当にお世話になりました。  またどこかでお会いしましょう!

そして!
岩手さん。厚田ビーチセンターのオーナーさん&おばちゃん。テンテン。スタッフの皆さんに二日間お世話になりました。

いろいろとありがとうございました!



 

第八十六話  Great Surf jorney Day-5 
“ 悩み ” 07-26

昨日は。  夕日を見ながら反省していた。



精神的に極限状態でのトンネル走行が続き全く心に余裕が無かった。
イライラもしたし。
あまりに危険な走行をする車やバイクには文句も言った。

情けないやら悔しいやら。  夕日を見ながら一日を振り返り。  自分の心の小ささを知った。
反省だ。
もっと強くなりたい。  強さとは。  力では無く。  心の強さだ。
どんな状況に於いても動じない。  心に一本芯の通った人になりたい。

それでいて。  何事にも囚われず。  心の大きい。  人になりたい。
その為には。  もっともっと自分と向き合い。  己というものを知らねばならない。
そういう意味では。
昨日はいい経験をしたとも言える気がする。

さて。
朝9時MASUKEのリバーサイドキャンプ場を出る。
お世話になったおじさんに挨拶をし、『気をつけてな~!』と見送られた。



*おじさん本当にありがとうございました!

結局。  今日はMASUKE~TOMAMAIまでの60㌔を走った。
峠は無く海沿いの平坦な道が続く。



山側はほとんど見ず。  サーフポイントはないかとキョロキョロしてばかり。





いくつか怪しい場所があったがはっきりしない。

途中。  徳島から来た日本一周バイカーKEISUKEさんに出会った。



自分のブログを見ていてくれたようで、以前にコメントもくれていたようだ。
まさかこんな場所で会うとは。

KEISUKEさんは。  途中で自分が高知で一緒になったMASAと知床の方で会ったらしい。
MASAと再会出来るかどうか。  これまた楽しみだ。

そう言えば。  北海道に入ってから。  あの本を読み始めた。



【SURF IS WHERE YOU FIND IT】

MauiのTOMOKOさんに頂いた本だ。  この本は北海道で読もう!と始めから決めていた。
この本は全7章39項で構成されている。
一日一項読むと。
この本を全て読み終える頃には北海道でのゴールが見えて来ている計算だ。
最後まで読み終えた時。  今の自分と。  その時の自分。
何か変わっているのだろうか。

そろそろ。  沖縄を出発してから三ヶ月が経つ。 良くも悪くも旅に慣れて来てしまった自分がいる。
本当に良くも悪くもだ。

今。  それがすごく嫌だ。
毎日を新鮮な気持ちで過ごしたい為の旅でもあるのに。  旅が日常になってしまい。
同じ事を繰り返している日々にさえ思えてくる。

何かが足りないのだ。       何かが。

これから先まだまだ続く長い道のり。  このままでは気持ちを維持しきれない。
そんな恐怖感にかられる時さえある。
今、心の中がひっちゃかめっちゃかだ。

心の。  気持ちの整理を。   着けなくてはいけない…

 

第八十七話  Great Surf jorney Day-6 
“ 雨降って… ” 07-27

日没後、風が強まり。  そして雨足も強まる。
バチバチバチっと風の勢いに任せ雨がテントを容赦無く叩く。

狭い三角形の空間で心細い時間を過ごしながらも。  この酷くな状況が嬉しかった。
自分と向き合うにはちょうど良い。
自然の中に身を置き。  自然の意のままに左右される全ての事。
森羅万象。
自分の意思などは、その前に立たされれば。  とてもとても小さなものだ。
それを改めて実感させられた。

そして今夜も本を開く。  開いたページのタイトルは。

When in Doubt,Paddle Out
~悩む位ならパドルアウト~

そんなタイトルだった。
それを見て思わず苦笑いしながら少し気が楽になった。

さて。  夜明け過ぎまで疲れた体に安眠を許さない雨は続き。
そのまま朝を向かえた。



6時頃。  雨と風が弱まると。  その隙をついて皆一斉に片付けが始まった。
濡れた荷物にため息混じりの苦笑い。 そんな光景があちこちで見受けられた。

隣にテントを張っていた大阪のYさん。



なんだかんだと話し相手になってもらって。

そして。  スコットランドどイングランドから来たチャリダー。





ハコブンダーを見て。  興奮気味に。  わんだふる!  くれいじい!  あめいじんぐ!
と騒いでいた。
とりあえず。  さんきゃうさんきゅう♪  と言っておいた。

みんな考えは一緒だった。  また雨が降る前に少しでも進もう。  と。
荷造りを終えた人から順にそれぞれの目的地を目指して走り出した。

曇り空。  景色は半減するが1番走りやすい天候だ。



遠くまで波打つ直線のアップダウンをひたすら前を見据えてペダルを漕ぐ。
途中気になる場所があれば足を止め波チェック。

昨夜の雨の激しさを物語るように川岸は削られ、水量は多く海は茶色だ。
昨日までの海と違い僅かながらうねりを伴って時折茶色の海にスープが見える。

途中、二カ所程。 ここならサーフィンが出来るなという場所を見つける事ができた。
でも海には入らない。

自分で波を探し、何もわからない状態で海に飛び込むには。
もう少し。
もう少しだけ海に魔法がかからなければならない。

途中。  チャリダー二人組に抜かれた。
しばらく行くと。  
二人は坂の頂上で待っていてくれた。



あれこれ話しをした。
二人は北海道入りのフェリーで一緒になり。  別々のルートに進んだものの。
途中で再会し、今は共に旅をしているのだという。

その後走りだすも。  チャリダーと自分はペースが違うのだ。



一人になるのが嫌で必死で追うも。







小さくなって行く背中は決して近付いては来なかった。

その時気付いた。
昨日までの心のつっかえは。  そこにあったんだと。

岩手県の手前でKENGO君に会ってから。  それまでの旅とは明らかに様子が変わった。
たくさんの人との出会いがあったそれまでの道のり。
けど。
同じペースで旅を続けられる人に巡り会う事は無かった。

一期一会だった。

だからこそ。  その一つ一つの出会いに感謝した。
そんな時。  険しい道のりの中で苦を共にし、くだらない事を言っては笑っている。
そんな旅の時間が新鮮過ぎたのだ。

だから。  また一人に戻ってしまったこの旅路が。  もの足りなく感じてしまったんだろう。
改めて一期一会と出会いの大切さに気付いた今日。
再び荒れ始めた北の大地はそれ以上の出会いのチャンスは与えてはくれなかったが。

ゆっくりと。  自分と向き合う時間は与えてくれた。
雨降って地固まる
悪天候にペースを乱されはしたが。
ぐちゃぐちゃだった心の方は回復傾向へ向かっているようだ。

TOMAMAE~TOOBETSU

ではまた!

 

第八十八話  Great Surf jorney Day-6 
“ 賭け… ” 07-28

稚内に向かう途中に、サロベツ原野と言う場所がある。
その原野に約70㌔に及ぶ何もない道がある。
70㌔と言えば自分のペースで丸一日かかる計算だ。

無補給地帯。
バイクや車なら問題ない。  ただ自転車や歩きの旅人には悩ましい道のりだ。
しかも。
晴れていればさぞ気持ちの良い道だろうに。



今日は天候が良くないというより荒れる予報だ。

今朝出発して、一つめの街。  TESHIOで一休みしていると。  
旅人が。
『これから天気が崩れるから、今日はもうこの辺りにしておきなよ!途中何もないし絶対無理だから進まない方がいいよ!』と、忠告された。

その時点で、出発して15㌔。  そこで留まるか、先へ進むか。  しばらく悩んだ。
が。
その旅人の言う『絶対無理』と言う言葉が。  自分からこの場に留まると言う選択肢を奪い去った。

確かに自分のペースからすればこの先の106号線をWAKKANAIまで進むのは厳しい。
そしてWAKKANAIまで行かなければこの道沿いには何もない。
ひたすら地図とにらめっこだ。  やや内陸に湖畔のキャンプ場を発見。
日没までの時間を逆算し、そこまでの距離を計る。
計算では日没迄には辿り着ける。
一か八かの賭けに出た。
辿りつかなければアウトだが…。

非常用の水や食料を買い込み街を出た。

暗雲立ち込める原野に並ぶ風車が不気味だ。



ブワンブワンと風を受けプロペラが回っている。
気のせいか、プロペラに勢いがついて来たように思った瞬間。
雨が勢い良く降り始めた。
一瞬で水浸しになり、PAのトイレにある風除室に逃げ込んだ。

時間は限られているのにも関わらずいきなり足止めだ。
しかし。
なぜあの時、街に留まらず走り出したのか。
先へ進みたいと、気持ちが焦っていた訳ではない。
悪天候になることは自分も最初からわかっていた。

別に自然を軽んじていた訳でもないし。  むしろその力強さを今迄も肌で感じて来た。

ただ。  あの時の言葉が自分を前に進ませた。
やはりこんな雨と風の日に。



四国でお会いしたシニアカーでお遍路さんをしていたおじいさんの言葉だ。

『そんなのやってみなけりゃわからんだろう!!』

あの時点で先へ進むと言うことを。  どうしても諦めたくなかった。
ただそれだの理由だった。

逃げ込んだトイレの風除室から横殴りの雨を見て。
ふぅ。
と、ため息が出た。
このまま最悪な場合はここで足止めか…。  そんな事が頭を過ぎる。

一時間位経っただろうか。  雨足が弱まって来た。
ちらっと時計を見る。  ラストチャンスだ。  今出ればまだ間に合う!

確証は無かったが希望はあった。
この悪天候、悪条件の中にも一つだけ。  一つだけ好条件がある。

追い風だ。
風車を勢い良く回し、海をジャンクにさせているこの風がきっと味方してくれる。
そう信じて再びペダルを漕ぎ出した。

途中。  今日の勝利?を確信した瞬間があった。



牧草地帯の真ん中で一人ケラケラ♪  あと四枚集めよう(笑)

今。  目的地のキャンプ場で日記を書いている。  安い料金で小屋も借りれた。
予報では今夜。  大雨になるらしい。  …助かった。

ホッとしながらも。  少し反省した。  もし、たどり着かなかったらと…。
小屋に吹きつける風雨の音を聞くとゾッとする。

無謀と挑戦は違う。  果たして今日の自分はどっちだったのだろうか。
そんな事を考えながら今日の日記を書いてみた。

ENBETSU~TOYOTOMI KABUTONUMA

~今日出会った旅人さん&サーファーさん~

大阪から日本4/5周中!



石垣島人!
稚内発日本縦断の旅!



稚内のサーファーさん!

 

第八十九話  Great Surf jorney Day-8 
“ 不動如山 ” 07-29

こんな時間に日記も珍しい。

宗谷地方:大雨 洪水警報  土砂災害の危険性高し

そんな訳で。
昨日から引き続きキャンプ場に。

聞いた話しによると。  通行止めの道もかなりあり。
この時期にこの荒れ模様も珍しいらしい…。

何もせずにじっとしているのも大変なものだ。

弱まってはまた強まる雨音。  時折、うなりながら吹く風。
あまりいいものではない。

利尻島へのフェリー乗り場30㌔手前にしての足止め。
明日の朝にはこの荒れ模様も峠を越すようだ。

今日は。
動かざる事山の如し。
どっしり構えて天候の回復を待つとしよう。

では。

 

第九十話  Great Surf jorney Day-9 
“ 利尻島へ ” 07-30

朝目が覚めると。
昨日までの風は止み。  どんよりとした雲の中にも平穏な雰囲気を感じた。

荷造りをし、稚内のフェリーターミナルへ向かう。
思ったより早く到着し、9時50分の発券開始を待つ。
予約をしていなかったので心配したが空いているようだ。

車輌搬入場所へ移動。
ハートランドフェリーのおじさが話し相手になってくれた。

今年はバイカーやチャリダーは少ないらしい。
確かに。  乗船間近になってもバイカーやチャリダーの姿はない。

利尻島から航行してきた【Boreas Soya】が着岸した。
しばらく待つと、おじさんがGOサインを出し、自分は『行ってきます!』と自転車を押しフェリーへ向かう。
いつものように。  船員さんを戸惑わせるハコブンダー。
『お願いします!』と相棒達を託す。
ぐるっと船内を一周。  やはりデッキが落ち着くらしく椅子に腰を下ろす。

夏休みの行事だろうか。  大人達に引率され子供達がたくさん乗って来た。
みんなワクワクした目をしている。
自分は。  デッキの最上階で、数日ぶりに目にする、僅かな青空を見ていた。

11時10分  定刻だ。  
エンジンの音が少し大きくなり。  お腹に響く汽笛の音と共に船体が動きだした。

その時だった。  なんの予告も無しに。  ぐっと込み上げてくるものがあった。
今まさに利尻島へ向かい始めた船上で。
これまでの道のりがフラッシュバックした。

思えば三ヶ月前。
沖縄の本部港でシーナサーフのコガちゃん、おっきー、そしてBOSSに見送られた時から本当の旅が始まった。



その時から。  ずっと目指していたのは利尻島だった。
まさかこのタイミングで想いが溢れてくるとは思っていなかったので、自分の感情に驚きはしたが嬉しかった。

回りの人達を見ると泣くに泣けず。 
ぐっと堪えはしたが、少しずつ遠ざかって行く稚内の港は霞んで見えた。

正直に言う。  実は少し旅に疲れていた。  先を考えれば考えるほど。
北海道に入ってもまだ半分にも達していない。
自分では認めたくは無かったが確実に気持ちは焦っていた。
その焦りが自分から感情を少しずつ少しずつ奪っていた。

これじゃダメだ。  と、思いながらもその焦燥感は消えはしなかった。
その焦りの中で溢れ出した自分の感情に。  再び旅を感じる事ができたのだ。

そして。  これまでの出会い。  苦難。  喜び。  寂しさ。
そのすべてに改めて感謝した。

海でたくさんの笑顔に囲まれて波乗りをした日もあった。
街中での野宿が怖くて眠れない日もあった。
峠道を自分に負けたくない一心で死に物狂いで這い上がった日もあった。

夕日を見つめ、自分を見つめ直す日もあった。

一つ一つの出来事が。  一人一人との出会いが。  繋がって。  線になって。
今、そのラインは利尻島へ。

ここまで約4200㌔  沖縄から利尻島までを線で繋げた。
しかし。  これはゴールではない。  通過点だ。
繋いだこの線を大きな円(縁)にする事。  それがこれから先の目標となる事を。

利尻島が見えて来た。  利尻富士はその姿を雲に隠している。
その雲が晴れた時。  どんな姿を見せてくれるのだろうか。

ふいに訪れたこの感情の中に。  改めてこれまでの出会いそのすべてに。  感謝します。

一期一会・一波一会

稚内~利尻島航路より

 

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