開聞岳が見えて来た。 前に開聞岳を見たのは。 そう。 ちょうど半年前だ。 沖縄の本部港から。 フェリーに乗り。 一晩眠り。 夜が明けた。 鹿児島が近づくにつれ。 自分の目をくぎ付けにしたのは開聞岳だった。 その時に。 一緒に話していた鹿児島のおじさんが。 その秀麗な山を見てこう言った。 『開聞岳が見えると、帰ってきたなぁ~って思うんだ』と。 そして。 『もうすぐ錦江湾だ。鹿児島はもうすぐそこだぞ♪』と。 枕崎に着いた辺りで見えてきたこの山を見て。 その時の光景が鮮やかに蘇った。 あれから半年か…。 と。 少し前まで。 鹿児島に近づく度に。 表現しきれないような気持ちになっていた。 でも。 その先に再び目的を見出だした時から。 鹿児島へ近づく事への切なさは消えていた。 まだまだ旅は終わらない! と。 今日の目的地を決め。 それぞれに出発した。 常に視界には開聞岳が見えている。 しかし。 必ずと言っていい程。 視界を遮るものがある。 どこかでこの山を。 この山だけを眺めたかった。 いつしか自分の中で。 波探しならぬ開聞岳ビューポイント探しが始まった。 いくつかの場所で山を眺め。 ん~…なんか違うなぁ…と思いながら進んで行く。 急に海沿いの道に出た。 ちらっと見ると。 中々よさそうな場所がある♪ ハンドルをきり。 海岸淵まで行ってみた。 ♪ やっぱりこれだ♪ 海にそびえ立つ円錐の山。 視界を遮るものは無く。 その裾野までを見る事ができた。 近くに。 車を停めて海を見ている人がいた。 ふと見ると。 サーファーさんのようだ♪ 『おはようございます!』と挨拶すると。 笑顔が帰って来た。 NAさんとNIさん。 この少し先に。 ポイントがあり。 そこなら少しだけ波がある。 と、教えて下さった♪ 場所を聞き、お礼を言ってその場所に向かった。 集落を抜け。 ガタガタ道を進み。 明るくなったら左。 その通に進んで行くと。 海岸手前にたどり着いた。 そこには。 海あがりのサーファーさんの姿があった。 『こんにちは~!』と挨拶をし海を見に行った。 海に入っているサーファーさんが一人だけいる。 波は。 ひざ。 潮が上げて来ていて。 割れづらい波。 たま~のセットが辛うじて岸近くでブレイクする。 そんなコンディションだった。 旅に出る前の自分なら。 この状況で海に入ろうとは思わなかったかも知れない。 しかし。 その海を見て。 旅の締めくくりに相応しいと思った。 波・サーフィンに対する感謝の気持ち。 自分の心次第で。 どんなコンディションでも。 "いい波"に出来ると。 それをこの旅で知った。 卒業試験だ♪ おもむろにウェットに着替える自分。 ちょうど今、海あがって来たローカルさんが。 『えっ!?今から入るの?』と驚いた。 『はい!』と自分。 確かに。 このコンディション。 一本も波には乗れない"かも"しれない。 でも。 乗れる"かも"しれない。 可能性は常に0ではない。 海に入る。 開聞岳がすぐそこに見える。 その雄大さを肌で感じる。 海に入らなければ感じられなかったかも知れない。 波は相変わらずだ。 いつ来るともわからない波を待ち続ける。 そんな時。 一本のセットがやって来た。 行ける♪ 直感的にそう思った。 ピークを見つけ全速力でパドルする。 乗れた♪ ロングライドでも何でもない。 ただテイクオフしプルアウトしただけだ。 でも。 それだけで大満足だった。 すると。 さっき海から上がって行ったサーファーさんが。 再び海に入ってきた。 二人で。 右かと思えば左。 左かと思えば右に入ってくる気ままなセットに振り回されながら。 笑いながら波乗りを続けた。 『今度は左じゃないですか(笑)』 『でも左に行くと右に入るんだよね~(笑)真ん中かなぁ~』 『じゃあ自分は右に♪』 と、そんな具合だった。 結局。 その日一番のモモサイズのセットは。 二人の予想に反して。 左奥でブレイクした。 楽しかった。 改めて思った。 波は。 波乗りは。 サイズやコンディションではない。 と。 心でするものだと。 ではまた! |