第八十八話  Great Surf jorney Day-6 
“ 賭け… ” 07-28

稚内に向かう途中に、サロベツ原野と言う場所がある。
その原野に約70㌔に及ぶ何もない道がある。
70㌔と言えば自分のペースで丸一日かかる計算だ。

無補給地帯。
バイクや車なら問題ない。  ただ自転車や歩きの旅人には悩ましい道のりだ。
しかも。
晴れていればさぞ気持ちの良い道だろうに。



今日は天候が良くないというより荒れる予報だ。

今朝出発して、一つめの街。  TESHIOで一休みしていると。  
旅人が。
『これから天気が崩れるから、今日はもうこの辺りにしておきなよ!途中何もないし絶対無理だから進まない方がいいよ!』と、忠告された。

その時点で、出発して15㌔。  そこで留まるか、先へ進むか。  しばらく悩んだ。
が。
その旅人の言う『絶対無理』と言う言葉が。  自分からこの場に留まると言う選択肢を奪い去った。

確かに自分のペースからすればこの先の106号線をWAKKANAIまで進むのは厳しい。
そしてWAKKANAIまで行かなければこの道沿いには何もない。
ひたすら地図とにらめっこだ。  やや内陸に湖畔のキャンプ場を発見。
日没までの時間を逆算し、そこまでの距離を計る。
計算では日没迄には辿り着ける。
一か八かの賭けに出た。
辿りつかなければアウトだが…。

非常用の水や食料を買い込み街を出た。

暗雲立ち込める原野に並ぶ風車が不気味だ。



ブワンブワンと風を受けプロペラが回っている。
気のせいか、プロペラに勢いがついて来たように思った瞬間。
雨が勢い良く降り始めた。
一瞬で水浸しになり、PAのトイレにある風除室に逃げ込んだ。

時間は限られているのにも関わらずいきなり足止めだ。
しかし。
なぜあの時、街に留まらず走り出したのか。
先へ進みたいと、気持ちが焦っていた訳ではない。
悪天候になることは自分も最初からわかっていた。

別に自然を軽んじていた訳でもないし。  むしろその力強さを今迄も肌で感じて来た。

ただ。  あの時の言葉が自分を前に進ませた。
やはりこんな雨と風の日に。



四国でお会いしたシニアカーでお遍路さんをしていたおじいさんの言葉だ。

『そんなのやってみなけりゃわからんだろう!!』

あの時点で先へ進むと言うことを。  どうしても諦めたくなかった。
ただそれだの理由だった。

逃げ込んだトイレの風除室から横殴りの雨を見て。
ふぅ。
と、ため息が出た。
このまま最悪な場合はここで足止めか…。  そんな事が頭を過ぎる。

一時間位経っただろうか。  雨足が弱まって来た。
ちらっと時計を見る。  ラストチャンスだ。  今出ればまだ間に合う!

確証は無かったが希望はあった。
この悪天候、悪条件の中にも一つだけ。  一つだけ好条件がある。

追い風だ。
風車を勢い良く回し、海をジャンクにさせているこの風がきっと味方してくれる。
そう信じて再びペダルを漕ぎ出した。

途中。  今日の勝利?を確信した瞬間があった。



牧草地帯の真ん中で一人ケラケラ♪  あと四枚集めよう(笑)

今。  目的地のキャンプ場で日記を書いている。  安い料金で小屋も借りれた。
予報では今夜。  大雨になるらしい。  …助かった。

ホッとしながらも。  少し反省した。  もし、たどり着かなかったらと…。
小屋に吹きつける風雨の音を聞くとゾッとする。

無謀と挑戦は違う。  果たして今日の自分はどっちだったのだろうか。
そんな事を考えながら今日の日記を書いてみた。

ENBETSU~TOYOTOMI KABUTONUMA

~今日出会った旅人さん&サーファーさん~

大阪から日本4/5周中!



石垣島人!
稚内発日本縦断の旅!



稚内のサーファーさん!

 

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