第八十七話  Great Surf jorney Day-6 
“ 雨降って… ” 07-27

日没後、風が強まり。  そして雨足も強まる。
バチバチバチっと風の勢いに任せ雨がテントを容赦無く叩く。

狭い三角形の空間で心細い時間を過ごしながらも。  この酷くな状況が嬉しかった。
自分と向き合うにはちょうど良い。
自然の中に身を置き。  自然の意のままに左右される全ての事。
森羅万象。
自分の意思などは、その前に立たされれば。  とてもとても小さなものだ。
それを改めて実感させられた。

そして今夜も本を開く。  開いたページのタイトルは。

When in Doubt,Paddle Out
~悩む位ならパドルアウト~

そんなタイトルだった。
それを見て思わず苦笑いしながら少し気が楽になった。

さて。  夜明け過ぎまで疲れた体に安眠を許さない雨は続き。
そのまま朝を向かえた。



6時頃。  雨と風が弱まると。  その隙をついて皆一斉に片付けが始まった。
濡れた荷物にため息混じりの苦笑い。 そんな光景があちこちで見受けられた。

隣にテントを張っていた大阪のYさん。



なんだかんだと話し相手になってもらって。

そして。  スコットランドどイングランドから来たチャリダー。





ハコブンダーを見て。  興奮気味に。  わんだふる!  くれいじい!  あめいじんぐ!
と騒いでいた。
とりあえず。  さんきゃうさんきゅう♪  と言っておいた。

みんな考えは一緒だった。  また雨が降る前に少しでも進もう。  と。
荷造りを終えた人から順にそれぞれの目的地を目指して走り出した。

曇り空。  景色は半減するが1番走りやすい天候だ。



遠くまで波打つ直線のアップダウンをひたすら前を見据えてペダルを漕ぐ。
途中気になる場所があれば足を止め波チェック。

昨夜の雨の激しさを物語るように川岸は削られ、水量は多く海は茶色だ。
昨日までの海と違い僅かながらうねりを伴って時折茶色の海にスープが見える。

途中、二カ所程。 ここならサーフィンが出来るなという場所を見つける事ができた。
でも海には入らない。

自分で波を探し、何もわからない状態で海に飛び込むには。
もう少し。
もう少しだけ海に魔法がかからなければならない。

途中。  チャリダー二人組に抜かれた。
しばらく行くと。  
二人は坂の頂上で待っていてくれた。



あれこれ話しをした。
二人は北海道入りのフェリーで一緒になり。  別々のルートに進んだものの。
途中で再会し、今は共に旅をしているのだという。

その後走りだすも。  チャリダーと自分はペースが違うのだ。



一人になるのが嫌で必死で追うも。







小さくなって行く背中は決して近付いては来なかった。

その時気付いた。
昨日までの心のつっかえは。  そこにあったんだと。

岩手県の手前でKENGO君に会ってから。  それまでの旅とは明らかに様子が変わった。
たくさんの人との出会いがあったそれまでの道のり。
けど。
同じペースで旅を続けられる人に巡り会う事は無かった。

一期一会だった。

だからこそ。  その一つ一つの出会いに感謝した。
そんな時。  険しい道のりの中で苦を共にし、くだらない事を言っては笑っている。
そんな旅の時間が新鮮過ぎたのだ。

だから。  また一人に戻ってしまったこの旅路が。  もの足りなく感じてしまったんだろう。
改めて一期一会と出会いの大切さに気付いた今日。
再び荒れ始めた北の大地はそれ以上の出会いのチャンスは与えてはくれなかったが。

ゆっくりと。  自分と向き合う時間は与えてくれた。
雨降って地固まる
悪天候にペースを乱されはしたが。
ぐちゃぐちゃだった心の方は回復傾向へ向かっているようだ。

TOMAMAE~TOOBETSU

ではまた!

 

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