第六十四話 “ ひごもっこす ” 07-04

我夢者羅に走り吹っ切れた日。
出会いが押し寄せて来た。

朝、某河口ポイントでお会いしたY君。


親切で物越しの柔らかい人だった。
Y君にキャンプ場を教えてもらったので、今日の目的地をそこに決めた。

途中点在するポイントをチェック。
福島のポイントは、日本の情緒溢れる魅力的なポイントが多い。



多いと言えば。
千葉の九十九里から茨城の中部辺りまでは平坦な道が続いた。
関東平野だ。
しかし、関東平野も終わりを告げた。
海岸線は起伏に富むようになり。  当然アップダウンも増えてきた。
しかし。  意外にも。
平坦な道より起伏がある道のりの方を楽しんでいる自分がいる。
単調な道のりは余計な事をついつい考えてしまう。
が、
目の前に登り坂が現れれば。  意識はその坂に集中される。  いい。
何より坂を登りびっしょり汗をかき。  坂でひゅ~っと体が冷えて行く感じが気持ちいい。

走ってる。   今。  いると言う実感がそこにはある。

さて、そんな峠道を登っていると。
急に声をかけられた。


神奈川から来たと思われる三人組の人達だ。
狭い車道で後ろの車がつっかえるまでの僅かな時間。
お互いに全力で話した。

後部席の彼が言った言葉が耳に残った。
『二週間前にワーホリから戻ったばっかりだから、旅とかすげぇよくわかるんですよ!』と。
きっと彼も。
今の自分がたくさんの人達にお世話になっているように。
親切や優しさ。  喜び悲しみ。  辛さと楽しさを味わって来たのだろう。
一人旅している時に一瞬でも、心が通じる喜びを。

さて。  福島の人は人懐っこい。
気軽に気さくに声をかけてくれる人が多い気がする。

またしばらく走ると。  ジュースを持った人がニコニコしながら自分に向かってくる。
Aさんだ。


昨日Aさんのお友達が自分を見たようで。  話を聞いていたようだ。
ニコニコとやはり物越しが柔らかい。
福島のポイントについて色々話を聞く事ができた。

そして。  その数㌔先でYU→KIさんが声をかけてくださった。


『ブログ読んでます!』と。
埼玉から波乗りのために福島に移り住んだと言う。

当然最初は苦労もあっただろう。
いや。
もしかしたら。  まだ登り坂の途中なのかもしれない。
でも。
その苦労を乗り越える原動力を彼女は持っている。

サーフィン。
好きな事をする為の苦労は楽しいって事にもきっと気付いているだろう。
こうして今日の午前中はたくさん出会いと笑顔に会えた。
皆さん本当にありがとうございました!

さて。
Y君が教えてくれたキャンプ場へようやくたどり着いた。
このキャンプ場。
使用料は無料で設備も整っている。  海の目の前で環境的には最高。

が、しかし…  そこは。
青いテントの。  プロのキャンパーさん達が集っていた…。
虎子を得る必要もないので虎穴には入らず。
泣く泣く移動。
昨日、寝不足気味だったので。  海辺で仮眠。

そして今日の寝場所を探しに再び移動を開始した。
ふぅ。  今日は寝場所を見つけられるだろうか。。
地図を見るとこの先の道の駅まではかなりの距離がある。
日没までに間に合うかどうかだ。

気合いを入れて走り出した瞬間。  道の駅 よつくら この先800m↑の看板が。
えっ?  
何故、えっ?か。
今日泣く泣く購入した地図。  そこにはこの道の駅が乗っていなかったからだ。
ともあれ。  ラッキーだった。
寝場所を求めてさ迷わなくてすんだわけだ。
なぜ地図に乗っていなかったかもわかった。
まだ道の駅として正式にオープンしていなかったからだった。
ともあれ。  寝場所をリサーチ。

敷地内をさ迷っていると。
衝撃的なものが目に飛び込んんで来た。


【心のそうじ隊】  【東京→北海道間清掃中】
と、のぼりを掲げた特大リアカーが!

ゾクゾクっ♪  ワクワクっ♪  アンテナ全開!  興味津々!!

しかし  このリアカーの持ち主が見当たらない。
回りを見てもそれらしき人の姿がない。
気になる。  あぁ~っ!  気になるぅ~!
いったいどんな人がこのリアカーを引いているんだろう。

ソワソワ。  ワクワク。  待ち伏せ開始(笑)

…。  …。  まだ来ない…。  …。  うぅっ  待ちきれない。
よし!  捜索開始!
と、思った次の瞬間。
その人が目の前に現れた。


熊本のNPO法人  青年競技会の  剛(つよし)さんだ。

ざっと活動内容を。
2010年6月1日現在  九州全域  熊本~東京間  で。
燃えるゴミ947袋 不燃物316袋 空き缶27965本 空き瓶3946本 
ペットボトル19334本  278㌔をこのリアカーを引きながらゴミ拾いを。

今回は東京→北海道間の旅の途中だった。
他にも様々な活動をしているが書ききれない。
*興味のあるかたは、【上村剛】さんで検索してみて下さい!

一目見た時。  その表情を見た時。   なんだかホッとした。
当然この後話をたくさんした。
今日はここに野宿だと言うので。  一諸に野宿することにした。

旅の空の下。  もう一人旅人が。
一人でない安心感。  尽きない話。
しかし。  さらに急展開が待っていた。
犬の散歩中のおじさんが。
話しかけて来た。
そして気付けばおじさんの家に二人でお世話になっていた。

途中から。  地元福島のボランティア団体  
ひなたぼっこ  の合川さんも加わり熱い夜に。



とても貴重な話を聞けた。
印象的な一言を紹介したい。
『ゴミを拾う事は徳を拾うこと。ゴミを捨てる事は徳を捨てる事なんです。』
『難しいことを考えるより、出来る事からやればいいんです。』
『成功の反対は失敗ではなく、なにもしなかったこと』
『ゴミ拾い笑顔集め』
目の前で巨大なリアカーを引いて歩いている人の言葉は、心にすんなり入ってくる。



不思議なものだ。  多分。  これの言葉を。
口先だけで何も行動出来ない人が言っても自分の心には響かない。

行動する事。  自らが行動する人。  その回りには自然に人が集まって来る。
とも、剛さんは言っていた。
熊本の方言。  【ひごもっこす】
やるったらやる!  やると決めたらやる!
シンプルだ。  何も難しくない。
『難しいことを考えるより、出来る事からやればいいんです。』
これが。
最初の一歩を踏み出す秘訣なのかも知れない。

今日の。  たくさんの出会いと。  笑顔に感謝して♪
おやすみなさい。

では。