第二十二話 “ やってみなけりゃわからんだろう! ” 05-19

今日は降られた。

そして吹かれた。
近くを走る電車も止まる位の雨と風。
チャリも薙ぎ倒される。



向かい風になると平らな道さえ前に進まない(笑)



さて。
昨夜は蚊との戦いだった。
1人対10匹。
ありとあらゆる手段を講じたが幾度となく襲いってくる蚊。

わかった。
もう降参だ。
ミイラにならない程度に吸ってくれ。
だだひとつだけ言わせてくれ。
蚊よ。なぜお前は耳元で飛ぶ。

寝不足気味で目が覚める。
雨が降っている。

準備を整え出発。
今日は時間調整の為に目的地を近場に設定。
何の為の時間調整?
雨が降る→風が吹く→低気圧が接近→波が上がる!?
室戸岬を回ればそこから徳島までいくつかサーフポイントが点在する。

今日行ってもどうせオンショアでぐちゃぐちゃな波。
せっかくならいい波に乗りたい。
明日の夕方かあさっての朝には海も落ち着き、いい波になっているはず。
と、そんな考えでのらりくらりと走る。

雨が激しさを増して行く。
雨宿りしよう。

見つけた東屋でひと休み。
昨日、頂いたお煎餅と土佐名物さつまいもチップスを頬張っていると。



一人のお遍路さんが雨宿りにやってきた。
ただ、普通じゃない。
(変な誤解を招いたらごめんなさい↑)
名前はわからないが電動の車に乗ったお遍路さんだ。。(たまに街中でお年寄りが乗っているやつ)
散らかしていたベンチを即片付ける。
『こんにちは!!すごい雨ですねぇ~』と話しかける。

電動カーから降りるおじいさん。
足が不自由なようだ。
しばらくは、たわいもない話しが続く。
おじいさん改めTさんは話してくれた。
それこそ昔は日本中の山に登り、スキーの指導員をし、ボーイスカウトの隊長もしたと言う。
しかし。
『わしは一度死んどる。』
とTさん。

今から20年程前。
マッターホルンへ4回目の登頂中に滑落し、首の骨を折ったのだ。
例え意識が戻っても全身麻痺と言われていたそうだ。

二年後。
突然意識を取り戻した。
もちろん、健康だった昔とは違い、体の自由は奪われた。
でもTさんは、今こうして電動カーにまたがり、四国88ヶ所を巡るお遍路さんをしている。
もちろん今回のお遍路さんだけでなく、電動カーであちこちに出向き旅をしているのだ。

初めて電動カーで旅に出ようとした時。
回りの人は心配して止めたと言う。
無理だよ。
やめなさい。
と。

でもTさん。
『そんなのやってみなけりゃわからんだろう!』と。
そして本当に電動カーで沖縄一周をした。
『わしは自然が好きなんだ。好きだからできるんじゃ。』
と。

『しかし、あんたも中々やるなぁ~(笑)』とTさん。
自分も思う事がある。
『人間。デキるかデキないかじゃなく、やるかやらないか。』
なんじゃないかと。
握手をして別れた。
Tさんの手は小さいかったが力強かった。
自分も力を込めて握り返す。

再び雨の中を走り出したTさん。



その姿を見て元気と勇気をもらえた。

ありがとうございました。Tさん!



~高知県室戸市より~