~自転車日本一周波乗旅的西方島波見聞録~
第百六十三話 “ 月の白虹 ” 10-22

真っ暗闇の島の港付近を。   うろうろさまようも。
この風をかわせる野宿場所は見つけられず。
結局、港に戻りテントを張った。


翌朝。
港の朝は早い。  5時過ぎには目を覚ました。
この島を出る始発の船便は6時過ぎだ。
島民の方達がターミナルに集まってくる。
も。
皆、引き返していく。
ん?
と思ったら。  強風の為、欠航。

もし昨日の夕方。
あの船に飛び乗っていなければ…。
しかし。
逆に言えば。  今日は島から出れない(笑)

まぁそれはいい。
まだ薄暗い島を探検だ♪
風向きを考慮し。
入手しておいた島の観光地図を見て目的地を決めた。

それにしても風が強い。

利尻島もそうだったが。  島の風はすごい。
向かい風になると。  平坦な道ですら、すごい労力を必要とする。

島のメインストリートを通るも。  まだほとんど人はいない。
途中にあった島の神社に立ち寄り。
『おじゃまします。』と挨拶をした。


海沿いへ向かう。
さらに勢いを増す風。
雲の隙間から太陽が見えて来た。

遠くに島影も見える。

いったい何と言う島なのだろうか。
そしてこの後。  くねくねした道を進んで行き。

海が見える度に足を止めた。

白波は至る所で確認出来るが。

探しているものとは違う。

まぁそう簡単には見つからないよね(笑)
と思っていた時。
小さな岬をまわり。  たどり着いたビーチを見て。
全身に鳥肌が立った。
ゾクゾクした。
こんな出会いを求めていた。
強風に煽られて決していいコンディションではない。
でもそこにあるのは。

波だ。

自分の目の前には確かに波がある。

まさか初日からこんな光景に出会うとは。
写真を撮るのも忘れて。  しばらく立ち尽くしていた。

今度は夢中でシャッターを切っている自分がいた。

ドキドキした。

一時間位、猛烈な風と闘いながらその場にいた。
この風が止んだら。
と、そんな光景を思い描きながら。

いったん港に引き返そうとなぜだか思った。
途中、休憩していると。
島のおばちゃんが、話しかけて下さった。

おばちゃんの落花生干しを手伝いながら話しをした。

島に特産品がないので試しに落花生を栽培しているらしい。
沖縄にあるジーマミ豆腐(落花生のお豆腐)の話しをすると。
すごく興味を示してくれた。

ふと。
さっき見たビーチでサーフィンをしている人を見た事があるかを聞いて見た。
『よそから来た人がたまにおるねぇ~。』と♪
さらに。
『この島にサーフィンしている人はいますか?』と聞いてみると。
どうやらいないらしい。

ともあれ。
あの場所でサーフィンが出来るのは間違いなさそうだ。
しかしあの風では…。
もし、無理にサーフィンをして。
万が一自分が事故や怪我をすれば島の方に迷惑がかかってしまう。
この風が明日の朝。  止んでくれれば。
と、祈るような気持ちだ。

おばちゃんにお礼を言った後。
いったん港に戻る事にした。


その頃になると。
島の方達をチラホラ見かけるようになったので。
挨拶♪挨拶♪と。
こんな季節外れに。
どう見てもおかしな輩が島をうろちょろしているのだ。
こちらからしっかり挨拶しなくては♪
『おはようございます!』と。

その途中。
『おはようございます!』と挨拶をしたおじさんが。
『どっから来たとね?』と、話しかけて下さった。
『これはなんね?』とサーフボードを指差すおじさん。
説明すると。
『前にサーフィンしてた人がおるよ♪』と貴重な情報を教えて下さった。

教えて頂いた場所に行ってみると。

今は使われていないサーフボードが敷地内の片隅に。


お店を尋ねてみる。
『~かくかくしかじか~』でと。
やはり、今はやっていなくても。
島のローカルさんに話しを聞かなければ落ち着かないのだ。
残念ながらTさんの写真はNGだったが。
『この島は特に問題ないよ♪』と。
ポイントの写真もサーフィンも何の問題も無いとの事だった。

*ポイントの画像はローカルさんの許可を得て掲載させて頂きましが島名地名等はあえて伏せさせて頂きます。ご了承下さい。

初日からこんな幸運に恵まれるとは思ってもいなかった。
もしかしたらと立ち寄った島で。  サーフィンの存在に出会えたのだから。

明日の朝。  風が落ち着き。  波があれば。
海に入らせて頂こうと思う。
もしコンディションが整わず、サーフィン出来なかったとしても。
波に乗る事だけがこの旅の目的地ではない。
こうして。
この島の波に出会えただけで。  価値のある事だ。
しかし。
今現在も吹き続く風…。

まぁ、明日は明日の風が吹くか♪
そんな事を思いながら。  ふと、夜空を見上げると。
そこにはもう少しで満月になりそうな月が出ていた。
そして月のまわりには。
白い虹が輪のように輝いていた。

この白虹も。
今、この島にいるから見れたのかな~と。
夜になりひっそりと静まり返った。
そんな島の夜だった。

ではまた!

*奄美大島での災害のニュースをフェリーターミナルのニュースで見ました。
旅の最後に立ち寄ろうと考えていましたが、島民の方の今の心境を思い、またの機会にしようと思います。