今朝は早起きした。 東の空が赤く染まり。 朧げにうねりが見える。 今日も出来そうだ♪ 冷え込む朝方。 水の冷たさもわかってはいる。 が。 そこには波がある。 考える必要などない。 誰もいない海に一人飛び込んだ。 波の音以外には何も聞こえない静寂な朝。 セットを待つ。 やや雲の多い空。 風は無く。 面つるだ。 セットが入った。 波にタイミングを合わせパドル開始。 板の後ろが持ち上がり。 ボードが波の斜面を滑り出した。 今だ! とテイクオフ。 信じられい程滑らかなその波は。 自分がサーフィンをしていることさえ忘れさせた。 体の力は抜け。 何もせず。 波の力に身を任せ。 ただただその不思議な感覚だけを感じていた。 気付いたらインサイドギリギリまでその状態だった。 ハッと我に返りプルアウトした。 再び沖を目指していると。 急にドキドキしてきた。 ふと、思い出したのだ。 あの時を。 初めてサーフィンをしたのは高校を卒業した夏だった。 高校生の時にブギボー(当時はボディボードでは無くブギボーと言った。)に出会い。 原チャリの足元にブギボーを載せて海まで行っては、波にもまれていた。 その頃からサーフボードは絶対に欲しい遊び道具No.1だった。 サーフボードを手に入れたのは高校を卒業し、夏を迎える少し前の事だった。 そして夏がやって来た。 訳もわからず、板を持って誰かの車に乗り込み変な態勢のまま海に行くのだ。 あの頃は波がどうとか、上手く乗れたとかなんてどうでも良かった。 どうせ、まともに波になんて乗れないのだ。 真夏の海にサーフボードを抱えてビーチに行き。 海に浸かっているだけで満足だった。 家に帰った後。 眠れない程の猛烈な背中のヒリヒリと格闘するのがまた面白かった。 そして日に焼けて。 肌が小麦色になればなるほど。 何だかサーフィンが上手くなったような気がしたものだった。 夏が終わると。 オリンピックやサッカーのワールドカップの後のように。 誰の口からもサーフィンの話しはでなくなり。 そして冬を向かえ、やがて春が来て。 また熱い夏がやって来るのだ。 すると。 誰からともなく。 そろそろ海に行くか? と、人数分のサーフボードをあちこちから借りて車に押し込み。 また変な態勢で海へ向かうのだ。 二年目の夏。 誰かがテイクオフ位はできるようになってくると。 みんなの目付きが変わった。 負けたくない! と、言う競争意識が芽生えるのだ。 すると。 おかしな現象が起きはじめた。 それまでは腰にゴムが入っている海パンだったスタイルが。 流行りのブランドのサーフパンツにラッシュガードと言う出で立ちに様変わりしたのだ。 そしてその勢いのまま何人かがウェットスーツを手に入れてから。 サーフィンは夏だけのイベントでは無くなった。 初めて。 波のフェイスを横に走り抜けたのは。 一冬越した次の夏だった。 あの日の事は今でも忘れない。 冬を越した友達と二人で波チェックに向かい防砂用の松林を抜け目の前に海が見えた時だった。 幾重にもうねりが連なり。 真夏の正午頃にも関わらず。 面は綺麗に整っていた。 そして規則正しく一定の場所からブレイクを繰り返している。 記憶の中の風景でサイズを思い出してみれば多分腰~腹くらいだったと思う。 さらに。 真夏の茅ヶ崎にも関わらず。 海はガラガラだった。 二人とも一目散に車に戻り板を抱えてダッシュで海に戻ったのは言うまでもない。 そしてその日。 初めて波のフェイスを駆け抜けた。 あの時の波から伝わる感覚。 言葉では表現しきれないその気持ちは。 今でも忘れない。 恐らく一生忘れないだろう。 波に乗りながら知らず知らずの内に叫んでいた。 いや、奇声を発していたと言った方が正しいかもしれない。 それまでも、もちろんサーフィンは楽しかった。 肩が外れるくらいはちゃめちゃにパドルをし、波に押されてテイクオフ。 ボトムまで真っ直ぐに降りそして板の先を少し横に向けると波に潰されぐるんぐるんと波に巻かれる。 テイクオフした次の瞬間にすぐそこに見える波のフェイスがとても遠く感じていた。 そしてこの日の何本目かの波が。 その先に待つ未知の世界への扉を解き放った。 そしてその扉の先には。 想像以上の世界が待っていたのだ。 あの時。 あの瞬間から。 サーフィンと言うものが。 自分の中の欠かせない大事なものとなった。 それは今でも変わらない。 そして今日。 一つわかった事がある。 自分が。 ずっと。 サーフィンに。 求めているのは。 あの時。 あの瞬間の。 初めて波に乗った感覚でありその時の気持ちなのだと。 一期一会・一波一会 同じ波は二度と来ない。 それはわかっている。 でも求めているのは。 そう。 あの時の気持ちなのだ。 |