第七十七話 “ 夕立 ” 07-17

昨日の夜はテントを張り。



テントの居室と前室と。  半分ずつ使って二人でテント泊。
KENGO君は寝袋しか持っていない。  この先どうするんだろう…

さて。  今日は最高にいい天気♪
しばらくサーフポイントもないので、ひたすら移動。  太陽がサンサンと。  ちょっと暑い。
いや。  暑い。  汗ダラダラだ。

走る。


走る。


走る?


ひたすら走り。  夕方。  目的地の道の駅も近づいて来た頃。
ぽつり。  ぽつり。  パラ。  パラ。
ザッー!!



夕立だ…   北の方から雨雲が。



南の方は青空だ。  急いで雨宿り。  少し待てば止むだろう。  通り雨だ。
日差しで熱くなったアスファルトに雨が落ち、道路から湯気がもくもく。

自転車日本一周      ~ サーフィンの旅 ~-DVC00191.jpg

なんだか靄(もや)みたいだ。  靄と言えば今朝も霧が立ち込めていた。



そして朝も一次。  雨模様だった。  でもそれは天気ではなく。  人の心。
彼の心がだ。

朝起きてから、相変わらずくだらない話しばかり。  テントを片付けたり、地元のおじさんと話したり。
身仕度も一段落し。  『今日は二つ先の道の駅まで行くよ。』と自分。
そこまでは50㌔位ある。
つまり。  歩いてくる彼は辿り着けない。
『青森が近付けばサーフポイントがあるから、その辺りでまた追い付かれるかもね(笑)』と。

つまり。  つまりは。  もうここで。  最後かも知れないって事だ。
もしまたタイミングが会えば。  縁があればまた再会できる。  でもその保障はない。
彼もそれはわかっている。  何も言わずに。  隣で鼻をズルズルしている。

あっ…。  泣いてるって。  すぐわかった。  でも気付かない振りをした。
気付かない振りをし続けた。

おかしな話しだが。  それが少し嬉しかった。  最初はお節介かとも思った。
旅に出たばかりの彼。  初めての旅に出たばかりの彼。  以前の自分がそうだったように。
彼もまた不安だろうと。  旅の楽しさを伝えたかった。  自分も以前の旅で旅人に会い。
一緒に旅をして。  そこで旅の。  出会いの楽しさを知った。

しかし。  出会いの楽しさ嬉しさと同時に。  別れの辛さも教えられた。
自分も何度も泣いた。
別れ際には泣くまいと。  必死で堪えた事もたくさんあった。
その人との出会いで。  その人が与えてくれたものが大きければ大きいほど。
その時泣いたのは。  寂しくて泣いたんじゃない。  別れが辛くて泣いたんじゃない。

嬉し泣きだ。

その出会いに。  感謝して。  有り難くて。  一緒に旅した日々を思い出すと。
なんだか涙が溢れてる。

それでいいんだ。  きっとそれが旅だ。  泣いている彼を横にして。  もしかしたら。
自分が今まで。  たくさんの人に。  旅人に。  与えられてきたように。
自分も何かを彼に与えられたのかも知れない。

そう思った。

少し彼から離れ、ふらふら散歩した。  自分も別れが辛くない訳ではない。
でも。  それ以上に。  再会した時の嬉しさを知っている。
だれかとの別れが。  また次の出会いを呼ぶ事も。  次に彼に会うのが楽しみだ。
その時は今よりたくましくなった彼が自分の前にいるだろう。

しばらくして戻ると。  両目を真っ赤にしながらも笑っている彼がいた。
そう言えば。  初めて会った日はなんだか疲れた顔で笑顔も曇っていたような気がする。

夕立は一旦治まりかけた後。  すべてを洗い流すかのように激しく降った。
そして。  晴れた。

自分の好きな言葉の一つ。  【No Rain No Rainbow】  雨が降らなきゃ虹は出ない



今日はそんな日だった。
では。

~岩手県宮古市の道の駅より~