第七十二話 “ ぶらりふたりで歩き旅 ” 07-12

昨日は。
日本三景の松島で野宿(笑)

夜中。  雨と風が強まり。  肝を冷やしたが。
おかげで。  新たな。  野宿スタイルを確立した(笑)



さて。
朝起きて。  準備を整え。  出発しようと思ったが。  回りのゴミが気になる。
これでは日本三景も台なしだ。
~立つ鳥後を濁さず~
ゴミ拾いの徳拾い♪

散らかった花火や空き缶やペットボトル。


目につくゴミをごみ箱へ。
ただそれだけだ。  ものの5分足らず。
でも。  ほんのちょっとでも。  やらないよりかは。

さて。
順調に道を進み。  お昼頃。  自分の少し先を気になる人が歩いている。
はて?  こんな場所で。
山登りでもなさそうだし。

徐々に追い付く。
背中のリュックに何やら文字が。   【日本一周中】

『来た~っ!!旅人発見っ!』と、心の中で大騒ぎ♪
『こんにちは~!』と。  この旅で歩いて日本一周をしている人に会うのは二人目だ。

きむら けんご君


穏やかな表情の彼は。  東京から19日目でここまで来たそうだ。
最初は。  走って一周するつもりだったらしいが。  流石にそれはきつかったようで。
歩き旅にしたようだ。

数日前に。  自分と同じく。
リアカーでごみ拾いしながら北海道を目指している剛さんと一緒になっていたらしい。
その時に自分の話しを聞いていたようだ。

繋がった♪

それにしても彼は、一日4~50㌔歩くらしい。
自分が剛さんと別れ、その先でのんびり波乗りしている間に追い越されていたようだ。

少しの間でたくさん話した。
今日は宿をとったという彼の目的地は、自分の目的地のその先だ。
あまり足止めしてはいけないと思い。  互いの検討を祈り。  お別れした。

彼もまた。  二年前の自分と同じように。  自分探しの旅のようだ。
走りながら考えた。  自転車と歩き旅。  ペースが違うから一緒には進めない。
でも。  もう少し話したかったな…。

あっ!  自分が歩けばいいんじゃん!
簡単な事だった。
なんで気付かなかったのか。

少し進んだ先のコンビニで飲み物を買い。  給水所気分で彼を待ち伏せ(笑)
あっ!来た来た♪  はいっこれ!  と、再び声をかけると。
彼は驚いた顔をしていた。
きっと自分も、突然声をかけられた時は。  こんななんだろうな~。
と思ったらなんだか堪らなく可笑しかった。

そこから。  自分が立ち寄る予定の日帰り温泉までの数㌔。
歩きながら。  話しながら。



ぶらりぶらりと。

旅での出会いの話しになった。
彼もまた出会いには恵まれているようだ。
そして。  彼の口から。
『恩返し』  と言う言葉が出た。

思わず少し前の自分の心境とダブった。
彼もまた。  旅を始めてたくさんの人にお世話になり優しくされてここまで来たのだろう。
そして彼も当然のようにお世話になった人に恩返しがしたい。
その人達の分まで頑張らなければ!
と。

きつい体に鞭を打って歩いているようだった。  その疲れが、笑顔の裏に影をさしていた。
いっぱいいっぱいなんだと思った。
旅に出て約三週間。  疲労も溜まる頃だ。
進んで来た道のりを思い返し。  その先の長い長い道のりに茫然とする頃だ。

恩返しについて。  今の自分が思う事を彼に話した。  自分に言い聞かしているようでもあった。
自分が旅先で出会った人達に言われた事を。  彼に伝えた。
自分は彼に伝えながら自分の気持ちに整理をつけた。
やっぱりそうだ。  それでいいんだと。
結局。  彼の気を楽にするつもりが。  自分の気持ちが楽になってしまった。

彼と別れ。  自分は少し寄り道。
昼間から温泉とは贅沢だ。  サクッと汗を流し。
外に出て風を浴び体を冷やしていると。

『これどうぞ!自分も昔、北海道回ったりいろいろしてたから。』と。


差し入れをいただいてしまった。
あっ。  やっぱりこれでいいんだ!  と。  改めて感じた。
次の旅人へ。  繋げる気持ち。  自分が受けた恩の。  感謝の気持ちを。

お礼を言い。  走り出した。
自分と彼の目的地は、この先10㌔位の所で分かれ道となる。
チラっと時間を見る。
まだ間に合うかも!
このいただいた差し入れは。  自分だけでなく。  彼の分もある気がした。

北上川沿いを進みながら彼の背中を追った。
分かれ道まであと数㌔。  間に合うか?

しかし、なかなか追いつかない。

分かれ道まで数百㍍。




いた!!

再び背後から彼を驚かし。  『これ半分個にしよう!』と。  半ば強引に?
頂いた食料を彼に半分渡した。
自分が。  今までお世話になった人への恩返しがどうしてもしたかった。

直接でなくとも。


こうして彼と別々の道へ。  また会えたらいいな。
と思いながら。  再び自分の一人旅が始まった。

ではまた!