第百五十四話  “ 一対一 ” 10-14

と、ある場所で。  見かけた一枚の写真。
島に架かる綺麗な長い橋。
その写真に目を奪われた。
なぜか?

その写真の隅っこにサーファーさんらしき姿が映っていたからだ。
地図を広げる。  長い橋を探す。
あった!
きっとここだ!
その感だけを頼りに走り出した。

山口県に入ってから。  まだ波乗りをしていない。
もちろん。  いつでも波乗りが出来るなどとは思っていないが。
本州最後のこの土地で。  どうしても波乗りをしたかった。

しかし。  昨日見た海は。  透き通る青いグラデーションの。  綺麗な凪の海だった。

途中。
海沿いに出た時に。  湾内にうっすらと見えるうねりに。  心を躍らせた。
もしかしたら♪
と。
下関も近い。
多分、山口県で波乗りするチャンスは今日だけだろう。
普段なら。

ひぃぃぃ~!  と、言いながら登る峠も。



今日は。  うぉぉぉ!  と登った。

お昼前。  国道を逸れ。  その橋が架かる島の方へ向かった。
木々の間から見える海には白波さえ見えない。
それに。
波がある時にサーフポイントに近付くと。  必ずサーファーさんの車に出会うのだが。
今日はそれさえも無い。

…あぁ今日はダメかな…。  と、思いつつも。  橋を目指す。
ちらっとその橋が見えて来た。



そして。  その手前に。  スープが見える!

ドキドキ♪
バクバク♪
高鳴る鼓動を感じつつ。  全速力で橋へ向かう。

橋に到着。
橋の下の白い砂浜のビーチには。



確かに波が割れている。
しかし。  ここからでは良く見えない…。
ちらっと上を見ると。  展望台が♪



階段を三段飛ばしで駆け上がる。
そして目にした光景に息を飲んだ。  誰もいないビーチに。
波がブレイクしている。



ハッ!  まぁ待て。  と。
今にも走り出しそうな自分の気持ちを落ち着かせる。
サーファーさんがいれば。  エントリーの場所や危険な箇所を聞く事も出来る。
が。
誰もいない。

まずはどうやってビーチに下りるかが問題だ。
じっくり回りを見渡すと。  ビーチの端に獣道がある。
その道をたどって行くと。  駐車スペースを発見。
一旦引き返えし。  さっき確認した場所に。  繋がるであろう道に入って行く。

ビンゴ♪

それからじっくり観察。
手前に一カ所岩があるが。  後は問題なさそうだ。

着替えを一瞬で済ませ。  ビーチへ向かう。
『いただきます!』



パドルアウトしてみると。
ビーチから見た時はひざ~もも位かな?
と思ったが。  たまに腰~腹近い波も来る。

橋の支柱の4本目の辺りにセットが入ると。  3本目位の場所でブレイクする。
他の場所でも波は割れているが。
ビーチの右側のレギュラーが♪  風は弱~いオンからサイドオン。
面にあまり影響はない。

それから2時間。  ずっと一人だった。
こんな経験はこの旅始まって以来だ。

セットを待っている間。  高知で出会ったきぃちゃんさんを思い出した。
自分に。  海に入る前の挨拶のしかたを教えて下さった方だ。

誰もいない海に一人で入っていると。
サーフィンは誰かに見せる為のものでは無い。  と、気付く。
そこには。
サーフィンの上手い下手などは存在しない。
ましてや。
競い合うものでも無ければ。  奪い合うものでもない。

そこに在るのは。
向かい合う波との。  一対一の真剣勝負であり。
自然のもたらす恵みを享受している事を実感できる瞬間だ。
と、きぃちゃんさんは言っていた。
だから海に入る時は。  自然の恵みに感謝して。
『いただきます。』
海から上がる時は。
『ごちそうさまでした。』
と。
俺はそう言ってるんだ♪と教えて下さった。

今日は。 その言葉を。  ほんの少しだけ。  理解できたような気がした。



さて。
海からあがり。  走り出した直後。  山口県で初めてサーファーさんと出会った♪
『やなっちさん??』
と、車を停めて出て来て下さった方は。
以前にコメントを下さっていたKさん♪

良く焼けていると思ったら。  ハワイ帰りらしい♪
今日はハワイから戻り最初のサーフィン。
波チェックに向かう途中に。  自分がフラフラしながら坂を登っていたようだ。

そんなわけでパシャ♪



っと一枚。
*Kさん!声をかけて応援してくだりありがとうございました!

そこからだいぶ走り。  道の駅も無いので。  ちょっとした公園に。
全く人気がなく。
ここ数日はKENGO君やチャリダーのY君と一緒になる事が多かったから。
今日はなんだか心細い。
遠くから聞こえる犬の鳴き声が。  近いて来ているような気がして怖い…(笑)

そんなわけで。  よい子はもう。  寝ます♪

ではまた!