第九十四話  Great Surf jorney Day-15 ~ 17 
“ REBUN WAVE ” 08-05 ~ 07

礼文島についてから一目散にキャンプ場へ向かう。
雲行きが怪しいからだ。
今夜から風が強まり明日は12~3メートルの風が吹くらしい。
数値的には先日の利尻島で(自分に)大災害をもたらした風より強い。

キャンプ場に着きテントを張ろうとしたら。
…?  ペグはどこに打つのかしら?
高床式になった木のデッキがテントをはれるスペースだ。
このパターンは今までもあったが、風もなかったのでそのまま何もせずにテントだけはっていた。
しかし、完全に強風恐怖症になった今の自分にとってはペグで回りをがっちり固めなければそこに安らぎはない。

回りのテントを見ると。  皆さん巧みなロープワークでテントを固定している。
ロープか…。  4本しか持ってない…
最低でも6本のペグで固定するこのテント。  4/6をロープで固定しただけであの強風と戦えるのか?
いや…。  勝敗の行方は結果を見なくてもわかる。
無理だ…  確実に飛ばされる。

一人でパニクり右往左往。
冷静になり、荷物を引っ掻き回しテントを固定する物を探す。 
そして足りない分のロープを現地調達。  かくして、がんじがらめのテントは出来上がった。



しかし、これであの時以上の強風に果たして耐えられるだろうか…。
不安なまま夜を向かえた。
そして…。  朝になった♪
この間の経験が生きた瞬間だった。
予報の風向きに惑わされず、風の通り道を考え。  風を交わす場所を探した。
結局。
山と林が風をブロックしてくれた。
風はここまで届かず、心配をよそに安眠をもたらしてくれた。

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<8月6日>

今日はひたすらテントの中で日記を書いていた。
途中で昼寝もしたがほぼ一日を日記に費やした。
ようやく書き上げた頃には日も暮れていた。

夕食にパスタを茹で空腹を満たす。
その昔。  鍋からはみ出たパスタが勢いよく燃え上がった頃が懐かしい。
今ではすっかりアルデンテだ♪

まぁそれはいいとして。  ついさっきの出来事だ。
引率の先生に従えられた子供達10人くらいがキャンプ場に来ている。
彼らの行動や言動は非常に興味深い。
子供の社会にも様々な駆け引きがあり、そして彼らなりの掟があるようだ。

それにしても。  引率の先生の放置っぷりには目を見張る物がある。
中年のチャリダーが子供達を怒鳴りつけるレベルだ。

夕食を食べ終えた子供達はキャンプ場を駆け巡り鬼ごっこに興じている。
そのあまりの熱狂ぶりに、一日中走りクタクタになった中年チャリダーは『おまえら!いい加減にしろ!ここは公園じゃねんだ!キャンプなんだぞ!』
そう。  ここは。  緑ヶ丘公園キャンプ場である。
どちらも間違いではない。

そんな時。  一人の男の子が転んだようだ。
『痛い~っ!足が痛いぃ!』と今にも泣き出しそうな声で叫び始めた。
その叫び方が尋常では無かったので、自分は慌ててテントから出て子供達の方へ向かった。
すると、それを遠巻きに見ている中年チャリダー。
完全に酔っ払っているヘラヘラしている外人カップル。

あなた達はそんなに近くにいるのに…。  と、思いながらも。
とりあえずその子の場所まで行き『大丈夫か?』と声をかける。
もちろん。  大丈夫じゃないから本人は泣き叫んでいる。

どうやら濡れた芝生に足を滑らせ、捻挫をしたようだ。
その男の子を落ち着かせながら回りの子供達に『先生呼んできて!』と伝令を頼んだ。

しばらくすると。  リアカーを引っ張った子供達が戻って来た…
『先生がこれに載せて運んで来なさいって!』
え…?  先生は様子さえ見に来ないの?
まぁ仕方ない。
右足首が痛いようなので、そっちをかばうように男の子をゆっくり支えながら立たせる。
『乗れるか?』と聞くと。
コクりと首を下げ、右足を軸にして左足を勢いよく振り上げ。 ピョコン♪とその子はリアカーに乗った。

あっ…。
この子にとって泣くほどの痛みも、リアカーに乗れると言う好奇心の前では無に等しかったようだ。
それにしてもこの先生は…。  究極の放任主義なのか、それともすべて計算づくなのか…。
結局それは最後までわからなかった…

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<8月7日>

実は。  ここ礼文島でも。  サーフィンが出来るらしいのだ。
利尻島を離れる直前にTOSHIYAさんがざっくり♪と地図にポイントを記してくれた。



最初はせっかくここまで来たんだから礼文島にも♪  くらいの気持ちだった。
でも。  サーフポイントがあると聞いたらその波に乗らない訳には行かない。
その昔。  ここ礼文にも一人だけサーファーさんがいたようだが、今現在この島にはサーファーさんはいないらしい。

昨日まで吹き続いた南よりの風は弱まり。  天候も回復してきた。
テントや荷物はそのままに。  ハコブンダーにウェットやら板を積み込み。
まずはフンベと言うポイントを目指す。  礼文島の1番南側に位置するポイントだ。

走り出してすぐに。  利尻岳がくっきりと見え、『あぁこの間あの先っちょにいたんだなぁ~♪』と少し感慨深い。



そのまま海沿いを(礼文島の)知床方面へ30分~40分走ると奮部と言うバス停を発見。



海を見渡すと。  確かに。  至る所で波が割れている。



が…。



インサイドにゴツゴツ岩がゴロゴロあり…。
果たしてどこのブレイクがこのポイントなのかがわからない。
しばらく行ったり来たりしながら波とにらめっこするも。
いいブレイクをしている場所のインサイドには必ず岩が剥き出しになっている。
結局、ここだ!と決め切れず。  島の西海岸を目指す事にした。

TOSHIYAさんが教えてくれた地図には。
元地海岸と言う場所に丸がしてあり『リーフ』とだけ書かれている。
しかし。
奮部と言う地域名のポイントよりは、元地海岸と言うポイントの方が場所を特定しやすい。

よし!ここでウダウダしててもしょうがない。  そこに行って見ようではないか!
と、鼻息荒く走り出し元地海岸を目指す。

島の西側に行くには峠を一つ越えて行く。





久しぶりにいい汗をかきながら坂を登り、トンネルを越えると、西側の海が見えてきた。



バラけてはいるがうねりが見える。  期待大♪
元地海岸に行くまでにも波がブレイクしている箇所があるがどこも岩が見え隠れしている。

むしろ。  岩にうねりがあたる事をきっかけに波がブレイクしている。
他の場所には目もくれず元地海岸を目指す。

到着♪  おぉ!波がある!!





…けど。  岩もあるぅ…。

またまたしばらく様子を伺う。  波を見ながらシュミレーションしているのだ。
あそこのブレイクは。  テイクオフ直後に岩で撃沈♪
こっちは?  テイクオフして少し行くと剥き出しの岩♪
あそこは?  ん~。  あのブレイクのしかたは…。  激浅岩盤ブレイク♪巻かれたらアウト!

で…どこの波に乗るのぉ~!!  もう訳がわからない。
どこのブレイクでシュミレーションしても必ずGame Overなのだ。

自分にはあからさまに危険な香りがいっぱいの海に一人で入る勇気がない。
小心者と言われても仕方ない。  怖いもんは怖いのだ。

うなだれながら道を引き返しキャンプ場に帰ろうとすると。
綺麗に波がブレイクしている場所を発見♪
でも。  どうせまた岩があるんでしょ!と、ふて腐れながら波を見ていると。



ピークからグーフィーにブレイクしていくラインに岩が無い。
時折、昆布がゆらゆら海面下に見え隠れしているが岩はない。

おお!?行けるかも!
そこから心の中で格闘が始まった。
『これは行けるよ!勇気をだせ!』
『いやいや。TOSHIYAさんが教えてくれたのは元地海岸だ。ここはちょっと違う場所だ…』
『でも岩は見えないし、いい感じに割れてるじゃん!』
『いやいやいや~ポイントじゃないって事はそれなりの理由があるってもんだよなぁ~。』
『じゃあなにかい?このまま礼文島でサーフィンしないで帰るのか!?』
と。
こんな具合に二人の自分が心の中で口論している。

結局。  勝ったのは好奇心の方だった。  昨晩のキャンプ場の子供と一緒なわけだ。
好奇心は恐怖にすら勝る。
自分に。  もし無理だったらすぐに海から上がろうと、はやる気持ちに保険をかけ着替えを始めた。

すると。  そこへ。
なにかと利尻島から顔を合わせ、話をするようになった名古屋のおじさんが通りかかった。
『あぁ!おじさん!』と声をかけると
『なんだサーフィンするのか?  じゃあちょっと見学していくかな(笑)』と。



そして厚かましくも、おじさんに自分のカメラを託し礼文島でサーフィンをした証拠写真の撮影を依頼した。
いざ海へ!



内心かなりドッキドキだがもう引き下がれない。  Eddie wolud go!だ。
因みに。  今回の旅で始めてリーフシューズを着用した。
それ程びびっている。

まずは波がブレイクしていない場所からピークに回り込む。
一~二本波を見てピークにじりじりよって行く。  クリアな海水。  思わず下をのぞく。
そんなに浅くない。  ゆ~らゆ~らと利尻昆布ならぬ礼文昆布が揺れている。

よし!行ける!  いきなりセットは狙わない。  手頃な波を待ち、まずは一本のってみた。
テイクオフ直後は厚い波だが少し走ると途端に掘れ上がる。
一本目はその急激な掘れ上がりっぷりに驚き即プルアウト。



二本目。  さっきの状況に若干の不安を感じながらも。  テイクオフ。
ちょっといい感じに乗ったが、やはり早めにプルアウト。



なんだかインサイドが気になる。
三本目。



四本目。



そして五本目。  うわっ。



プルアウトが遅れ最後のどっか~ん!に捕まってしまう。
次の瞬間。

全身を恐怖が襲う。



あっ浅いぃ!!  水深はすね~膝くらい。
ぎゃぁぁ!!と心の中で叫びつつ一目散に岸へ引き返した。
こうして。  礼文島での波乗りは幕を閉じた。

教訓。  未知のポイントで波乗りをするときは。  インサイドの水深を計ってからにしましょう!…。
そして改めて思う事が。  ビーチブレイクならいざ知れず。
リーフブレイクを開拓してきた先人達に。  尊敬の念を抱かずにはいられません。

そして。  恐らく。  ここで波乗りをする人はいないとは思いますが。  せっかくなので。
ここを。 【やなっちポイント】と名付けておく事にします。

さて。
明日は午前のフェリーで稚内に戻り、広大な北の大地の旅を続けて行こうと思います。

ではまた!

 

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