第三話 “仙人と粋な冒険家に風邪っぴき” 04-30

朝6時過ぎに目覚めフェリーのデッキで朝日を浴びる。遠くに見える硫黄島をぼんやりと眺めていると。

『開耳岳が見えてきたな』と、横の初老のおじさんが呟いた。その方向を見てみると綺麗な形をした山がうっすら見えた。
『あの山を見ると戻って来たなって思うんだ。』
と。
『鹿児島の方ですか?』 と聞くと、そこから会話が始まった。

旅の話し・戦争の話し・闘病の話し・中国での山篭りの話し・家族の話し・朝日や夕日の話し。

気づけば鹿児島入港30分前だった。2時間位話していたことになる。

明日おじさんは、大学で講演をするらしい。

何の目的も無く大学に入り、やりたいことも見つけらない若者に『思いっ切り遊べ!』と言ってやるんだとニヤニヤしてた。

どうやらおじさん、名のある水墨画家らしい。

奄美大島で泥染めをしてきたと言って自分にTシャツを一枚くれた。

染めては絞り染めては絞りを82回も繰り返したものらしく、おじさんの氣がたっぷり入ったこのTシャツ。
なんだか着ているだけで元氣になりそうだ。


嬉しくて、すぐに着替えておじさんに見せると『似合うなぁ~』とニコニコし、『じゃこれも持って行け!』と、なぜかお酒まで頂いた。
『お前、旅人だろっ?』
『お前さん見たいなのを見てると嬉しくなってくるだ!』
『あんたにあって元気をもらった!ありがとう!』と。
『旅をして人の痛みがわかる人間になりなさい。日々の出来事に感謝し、生(せい)を感じなさい』と。

話しが心にすっと入ってくる仙人みたいな人だった。
別れ際に名前を聞いてみた。そしたら名前と一緒に一筆したためてくれた。
『朝焼けに 旅人ひとり 果てぬ夢 氣を持ち 痛む心根を 寂泉』と。





さて、鹿児島港で仙人おじさんと別れたあと、取り合えず屋久島行きフェリーターミナルへ移動した。

明日の朝7時出港。

暇だ。

ボケ~ッとターミナルの前でフラフラしていたら、チャリダー接近♪
千葉から来たSさん。
取っ捕まえ30分位話した。明日、自分と同じく屋久島行くとの事で、明日の朝に再開しましょう!とSさんを解放。

さらにしばらくすると明日のフェリーで種子島へ行くと言うバイカーさんを捕獲し、1時間位話し込んだ。今から20年程前にヨーロッパからアフリカを1年かけて横断し希望峰までいった筋金入りだった。

そんな凄いことを聞き流してしまいそうな口調でサラッと語る。

粋だ。

更に地図を買いに鹿児島市内へ向かい、書店のあるデパートに入ると、一角のブースにに年期の入ったチャリとシーカヤックが。

はて?
なんでかな?と思っていたら。

その横でノモトさんって方が鹿児島の自然で遊ぼう!見たいなイベントを行っていた。

入ってみる。

すると鹿児島や南西諸島でのカヤックのスライドショーが行われていた。

見終わると、どちらからとも無く話し始めた。

聞けばノモトさん、飾ってあったチャリでオーストラリア横断をしたらしい。

おねだりして、チャリの前で一緒に記念撮影♪

今は鹿児島でカヤックのガイドをしているらしい。

チャリとカヤックと言えば岡さんがすぐに頭に浮かんだ。

で、その後どうしました?
話しが逸れた。

さてさて。

やれやれだ。

少々お風邪を召してしまった…。
怠さはあまりないが咳が出る。
取り合えず明日、屋久島に渡ってから風邪の具合と相談して予定を組むとしよう。
では。