~自転車日本一周サーフィンの旅番外編 ~歩旅最果島紀行~
第百八十七話 “ ムーンリバー ”  11-21

西はイリで。

東はアガリ。

きっと太陽のことだ。


東から太陽が上がり。

西の水平線へ入って行く。

西表島に到着したのはお昼前だった。

まずはキャンプ場を探すことに。

 

荷物満載のバックパック&サーフボード一式。

総重量約2223㌔。

この荷物の大半はキャンプ道具と自炊道具だ。

キャンプ場意外でのキャンプ&野宿が全面禁止の八重山諸島では。


ほぼ無用の長物だ…

それでも。

西表島にはこの時期でも開いているキャンプ場があるらしいとの事で。

ゲストハウスに荷物は預けずに持ってきた。

せっかく持ってきたのだからなんとか使いたい。

と。

ちょっと意地にさえなっている(笑)


港から一番近い。

数㌔先のキャンプ場へ向かう。

どうやらこの荷物を背負ってだと。

一時間に34㌔進むのが限界のようだ。

地図にのっているキャンプ場を目指して進む。

 

途中。

商店に立ち寄り食料調達。

おばちゃんにキャンプ場までの道を聞き。

買い物を済ませ商店を出た時だった。

ある物が目に飛び込んできた。

 

駐車場に停まっている車の上に。

サーフボードが積んである。

正確にはスタンドアップパドルボードだ。

 

自分は。

車の女性にすぐさま声をかけた。

しかし。

なんと声をかけたかは、はっきり覚えていない。

島でサーフボードを目にした事にすごく興奮していたのだ。

 

その女性=Nさんと少しやり取りをすると。

島のローカルサーファーのK1さんに連絡をしてくださった。

 

K1さんの連絡先を聞き。

Nさんにお礼を言い、まずはキャンプ場を目指した。*112103

島でローカルサーファーさんに会うのは。

すごくドキドキする。

 

誰々さんの紹介で来ました♪

となれば話も早いが。

もちろんそんなルートは持ち合わせていない。

だからこそ。

旅の中での一つ一つの出会いを大切にしなくてはならない。

 

今は。

掴みかけたこの流れになんとか乗りたい。

焦りに似た妙な心境が心の中に波打っている。

自分が受け入れてもらえるのかもらえないのか…

 

そんな事を考えながら。

そこから30分程歩くと。

目的のキャンプ場にたどり着いた。

が…

年中無休のはずがまさかのClose

急に肩に食い込むバックパックが重みを増す。


来た道を引き返し。

港を過ぎもう一つのキャンプ場へ向かう事にした。

 
夕方。

ようやくたどり着いたキャンプ場。

受付を済ませようやく一安心。

こんな時期にキャンプをしに来る人も珍しい。

そんな表情が見て取れる。


誰もいないキャンプ場。

テントを張り。

背中にくっつきそうなお腹を満たすため。

食事の準備。

水加減を失敗したご飯にレトルトカレーをかけ。

空腹を満たす。


少し元気を取り戻した。

 

意を決してローカルのK1さんにコンタクト。

電話がコールされる。

もう心臓が口から飛び出しそうだ。

 

しかし。

電話口に出た優しい声に救われた。

この旅に出て初めてホッとした瞬間だった。


『じゃあ夜にでも一緒に飲みながら話しましょう!』

となり。

夜まで待つことになった。

 

 

日が落ちていく。

それと共に。

真ん丸の月が上がってくる。

 

さっきまではあまり気付かなかったが。

今までに聞いた事の無いような虫たちの鳴き声がそこら中から聞こえてくる。

東洋のガラパゴスと呼ばれるこの島の一面を垣間見た気がした。

 

月明かりに誘われて。

キャンプ場をうろうろしてみた。

満月のおかげで。

足元は明るいが。

ハブを踏まないように懐中電灯を地面にあてる。

 

キャンプ場の端まで行き。

見渡した景色に息を飲んだ。

ムーンリバー。

月明かりがキラキラと海に輝き。
まるで大河のように佇んでいる。

夢を見ているようだった。

少しおかしく思われるかもしれないが。

 

この時。

この島に。

宇宙を感じた気がした。

 

続く。

 

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