第百七十八話  “ 0地点 ” 11-04

 今朝。
昨日活動班が一緒だった島人のダイスケ君が。
『奄美の為にこんだけしてもらってるんですから!気にしないで下さい!』と。
住用町の活動本部まで自分達を乗せて行ってくれた。
今日も受付を済ませ。  せっかくなので三人同じ班に♪

今日の現場が伝達される。

住用町内Kさん宅へ。
先発隊も合わせ女性6人男性4人で。

土砂の片付け。

倒木の片付け。  家具の移動。  凸凹になった敷地の整地。
室内の清掃。  床板剥がし。

等々。
流れる汗に。  カラッとした青空の下。

通り抜ける風が気持ちよかった。

昼休み。
Kさん宅から100㍍程奥に行ってみた。
在り来りの表現で申し訳ないが。  びっくりした。
広範囲に及ぶ崖崩れ。
その下には。  車が無惨な姿で横たわっていた。

今現在も。
斜面には亀裂が入り。  二次災害の危険性が高いとの事で。
Kさんご夫婦は避難所生活を送っているという。

Kさんが。
ご自宅内の壁に着いたラインを指差した。



『ここまで水が入って来たから泳いで逃げた』…と。
えっ?  床から2㍍はある…。
その時の様子を頭に思い浮かべてみても。
はっきりとしたイメージはわかなかった。
それでも。  恐さだけはひしひしと肌に伝わってきた。
Kさんの車も流されてしまった。  とも言っていた。

夕方。
作業も終わり。  本部へ戻る車を待つ間。
奥さんがこう言っていた。

『本当にありがとう。こんなにたくさんのボランティアさんが来てくれるとは思わなかったよ。』
と。
そして。  『今日でやっと0になった。ここからだね。』と。
ハッとした。
初日の片付け。  山のようにあったゴミをトラックに載せ。
すっきりしたゴミ捨て場を見て満足していた。

昨日のおばさんのお宅。
泥だらけの室内をみんなで片付け。  綺麗になった室内を見て。
終わった~♪  と、思っていた。
しかし。
それは完全に自分の奢りだった。
被災された方にしたら。  
ここからが。  今まで通りの生活に戻る為のスタートラインなのだ。
いや。
スタートラインに向けて一歩前進しただけなのかもしれない。
これから。
気の遠くなるような時間を費やし。  近付く冬の足音を感じながら。
少しずつ。  少しずつ…  一歩一歩。

どうか。  心折れずに前に進んで欲しい。
自分みたいな人間でも。  毎日毎日。  ゆっくりでも。
諦めず前に進み続ければ。  ここまでたどり着けたのだから。

夕方。
昨日ボランティア班が一緒だった東京から移住されてきた島のお医者さん。
SANOさんが。  自分達を夕食に招いて下さった。

『私の妻もボランティアに参加したい気持ちはあるけど、身重な体で。
だからその分!』
と。
最初にSANOさんにあった時。  
てっきり奄美の方だと。  そう思っていた。
自分にそう思わせたのは島への熱い気持ちからだった。
災害直後から不眠不休で医療に従事し。
昨日。  
やっと一段落し手が空いたので。 
現場のボランティアに参加されたと言う。

SANOさんは言った。
『自分がそう言う思いになれたのはこれまで島の方達に親切にしてもらったからです!』と。

自分は思った。
たぶんたくさんの方が。  こういう災害時に何か自分も!  
"でも…"  時間もないし…  何をしていいのか…  
と、思っていると思う。
しかし。
自分は直接ボランティアに参加しなくても。  できる事があると知った。
遠く離れた場所でも。  全くその災害に関係のない。
何も起きていない時でも。  ふとした優しさや親切が。  巡り巡って。
いつしか形になるのだと。

今日の夜。
KENGO君は鹿児島に戻って行く。
ダイスケ君とSANOさんも一緒に見送りに来て下さった。

一人じゃなくてよかった(笑)
一人で見送りはちょっときつかったかもしれないから。

春に沖縄を出発した時。  オッキーがお守りをくれた。
すっかり汚れてしまったが。  ずっと自分を守ってくれていた。

『神様お願いします!もう少しだけ、彼の旅もよろしくお願いします!』
そう心に願い。  
こっそり彼の。  パンパンに膨れ上がったバックパックに結び付けた。

離れて行く船。
ふと見ると。  見送りの方と旅立つが。  虹で繋がっていた。

利尻島を思い出した。
あの時も思った。
この紙テープはいずれ切れてしまう。
けど。
心の繋がりは決して切れないと。

KENGO君!  今までありがとう!

ではまた!

 

■Extra

【Kさんからの差し入れ】


【消毒は忘れずに】


【力】


【大忙し】


【IドキドキAMAMI】