第百七十五話 “ 手紙 ” 11-1

ぶわぁぁぁぁん!
出港の汽笛がお腹に響いた。

明日の朝には奄美大島、名瀬港に到着する。
その後の予定は何も決まっていない。
が。
利尻風に言えば。  『行き当たりバッチリ♪』
この旅で出会った1番好きな言葉だ。

この旅は。
最初からそんな旅だった。
だから最後まで。  行き当たりバッチリ♪で。

汽笛と共に。
離れて行く港を見ながら武者震いした。
いよいよだと。

しかし。
船内の乗客の多さには驚いた。
2等船室は満員御礼。
その中でも目を引くのは。  作業服に身を包んだ人達。
きっと。
奄美大島の災害復帰に向かうのだろう。
そんな中。
なんとなく気後れしてしまう自分達。
でも。
旅に出て。  一つ得たものがある。

それは"自信"だ。

それは自分を強く見せたりするものではなく。
自分を信じる勇気。
きっと何か出来る事がある。  そう心の中で信じている。

小学生の頃。
細かくは覚えていないが。  母親から手紙をもらう。
そんな授業のようなものがあった。
その手紙にはこう書かれていた。
『あなたは私のお腹を痛めずに産まれてくれた優しい子です。そのままの優しい人に育って下さい。』と。
優しさとは。  強さであり。  勇気であり。  自分を信じる心だ。
胸を張ろう!  自分は間違ってない!
と。

錦江湾を南に進んで行く船。  その船のデッキの上で。
離れていく街と。  星空を見ながら。
『よっしゃっ!いっちょやったるで~!』
と叫んでみた(笑)

ではまた!